PayPal Links発表、暗号資産送金と使い方解説

PayPalが発表した新機能「PayPal Links」は、チャットやメールに貼るだけで送金や支払い依頼ができるシンプルな仕組みです。米国ではすでに利用が始まり、暗号資産(ビットコインやイーサリアムなど)での送金にも対応予定。
この記事では、従来のサービスとの違い、利用手順、業界や日本市場への影響までをわかりやすく解説します。
PayPalが新機能「PayPal Links」を発表
PayPalは2025年9月15日、新しい個人間送金機能「PayPal Links」を発表しました。利用者はアプリ上で金額や内容を指定し、一度きりの決済リンクを生成できます。リンクをチャットやメールに貼るだけで、送金や請求が完了するシンプルな仕組みが導入されました。
この新サービスは米国で先行して提供が始まり、今月中に英国やイタリアなどにも拡大される予定です。
さらに暗号資産(ビットコイン、イーサリアム、PayPal独自のステーブルコインPYUSDなど)にも対応予定で、PayPalやVenmo、その他の暗号資産ウォレットに直接送金できるようになります。
従来の「PayPal Me」とは異なり、PayPal Linksは特定の金額や用途を事前に指定できるため、やり取りがスムーズで誤送信リスクも減少します。10日間の有効期限やキャンセル機能もあり、安全性と利便性を両立させている点が特徴です。
今回の発表は、グローバルで拡大するP2P(個人間送金)市場においてPayPalが主導権を強化する動きの一環です。シンプルなUXを重視した仕組みは、個人のギフト送金からビジネス利用まで幅広い用途に適しており、今後の展開が注目されています。
従来機能との違いと「PayPal Links」の特徴
PayPal Linksは従来の「PayPal Me」とは仕組みが大きく異なります。PayPal Meはプロフィールを共有して相手が金額を入力する形式でしたが、PayPal Linksは送金者が金額を設定してリンクを発行できるため、より明確でスピーディーな取引が可能になります。
「PayPal Me」との比較
両者の違いを理解することで、どのように使い分けられるかが明確になります。特に「誰が金額を決めるのか」「取引の手間」「利用シーン」で大きな差がある点が重要です。
| 項目 | PayPal Me | PayPal Links |
|---|---|---|
| 金額設定 | 受け手が入力 | 送金者が事前に指定 |
| プロフィール共有 | 必要(PayPalアカウント確認) | 不要(リンクのみで取引可能) |
| 利用シーン | 継続的な支払い、寄付など | 一度きりの送金や割り勘、立替精算など |
| セキュリティ | プロフィール公開が前提 | リンクは10日間で失効、キャンセルも可能 |
この比較からわかるように、PayPal Meは継続的な支払いに便利ですが、PayPal Linksは「一度きり」「スピード重視」の場面で力を発揮します。
「PayPal Links」の使い方と特徴
PayPal Linksはシンプルな手順で利用でき、直感的に使える点が強みです。以下の流れを押さえると、初心者でもすぐに活用できます。
- アプリを開き、送金または請求の金額と内容を入力
- 一度きり有効のリンクを生成(取引専用)
- リンクをチャット、メール、SNSのDMに貼り付けて共有
- 相手はリンクをタップするだけで送金または支払い完了
- リンクは未使用の場合10日後に自動失効
- 必要に応じてリマインド送信やキャンセルも可能
この仕組みにより、複雑なアカウント確認や連絡先共有が不要になり、ビジネスや日常の小額取引がこれまで以上にスムーズに行えるようになります。
背景にあるP2P決済市場の拡大と競合動向
PayPalが新サービスを打ち出した背景には、急速に拡大するP2P(個人間送金)市場があります。
米国ではVenmoやZelleなどが若年層を中心に普及し、日常的な小口決済や割り勘文化を支える存在になっています。PayPalはこの競合環境の中で、自社の存在感を高める必要がありました。
P2P決済がPayPal戦略に占める位置づけ
P2P決済は単なる送金手段ではなく、PayPalにとって新規ユーザー獲得や利用頻度向上の入り口となる重要な機能です。公式発表によれば、2025年第2四半期には個人向け取引を含む総決済額(TPV)が前年比10%増加し、Venmoは3年ぶりの高い成長率を記録しました。
この成長は、PayPalが利用者にとって「最も簡単で安全な送金手段」であり続けることを重視している証拠です。P2Pで一度利用したユーザーが、オンラインショッピングやサブスクリプション決済にもPayPalを選ぶ可能性が高まり、結果的にエコシステム全体が拡大する仕組みになっています。
- P2P決済の利便性=ユーザーのエコシステム定着につながる
- 決済額の増加が企業全体の成長ドライバーに
- Venmoの成長はモバイル世代への浸透を裏付ける
競合サービスとの比較
米国や日本では複数のP2P送金サービスが競争しています。PayPal Linksは「リンク生成型」という新しいUXを武器に差別化を狙っていますが、他社との違いを把握することは重要です。
| サービス | 特徴 | 利用シーン | 弱点 |
|---|---|---|---|
| PayPal Links | 一度きりの送金リンク生成、暗号資産対応予定 | 立替精算、海外送金、小口取引 | 日本での普及は未定、暗号資産規制の影響大 |
| Venmo | 米国で若者に人気、SNS的要素 | 友人同士の割り勘、送金 | 米国外では利用できない |
| Zelle | 米大手銀行連合によるP2P送金 | 銀行口座間の送金 | 暗号資産や国際送金には非対応 |
| LINE Pay / PayPay | 日本国内で高い利用率 | 日常の小額決済、QRコード支払い | 国際送金や暗号資産対応は限定的 |
この比較から見えてくるのは、PayPal Linksが「グローバル展開」「暗号資産対応」「リンク生成」という3つの強みを持つことです。他社がカバーしきれていない部分を補完できれば、競合優位性を築く可能性があります。
暗号資産対応の意味と業界へのインパクト
PayPal Linksが注目を集める大きな理由の一つは、暗号資産送金への対応です。ビットコインやイーサリアムといった主要通貨に加え、PayPal独自のステーブルコイン「PYUSD」を利用できるようになる予定であり、これは従来の送金サービスにはない特徴です。
PayPalにおける暗号資産の戦略的位置づけ
PayPalはすでに暗号資産の購入・保有・決済に対応してきましたが、今回のアップデートで「P2P送金の流れ」に直接組み込むことになります。これにより投資用途にとどまらず、日常生活の小口決済にも暗号資産を利用できる環境が整う点が画期的です。
また、PYUSDは米ドルに連動するステーブルコインであり、価格変動リスクを抑えた送金が可能です。発行元のPaxos Trust Companyが米国当局の認可を受けている点も、信頼性を高めています。
- ビットコイン・イーサリアム:投資用から決済用へシフト
- PYUSD:価格安定性を持つステーブルコイン
- PayPal World:複数ウォレットの相互接続を目指す戦略
これらの取り組みは、暗号資産を「投機対象」から「日常の送金手段」へと位置づけ直す大きな一歩といえます。
利用者・企業にとってのメリットと課題
暗号資産送金が加わることで、個人や企業は新しい利便性を享受できます。一方で、税制や規制の面では課題も残されています。以下にメリットと課題を整理しました。
| 観点 | メリット | 課題 |
|---|---|---|
| 個人ユーザー | 海外の友人や家族への即時送金が可能、為替手数料を抑えられる | 日本では暗号資産送金に規制が多く、利用範囲が限定的 |
| 小規模EC事業者 | 暗号資産決済の受け入れが容易になり、国際顧客を獲得しやすい | 価格変動リスク、会計処理の複雑化 |
| 企業全体 | 新市場への参入チャンス、ブロックチェーン活用の拡大 | 規制動向次第でサービス展開が制約される可能性 |
このように、暗号資産対応は利便性を飛躍的に高める一方、制度的な整備が追いつくかどうかが普及のカギを握ります。特に日本では税制や送金ルールが厳しいため、すぐに普及するとは言い切れませんが、グローバル動向に大きく影響を与える点は間違いありません。
日本市場への影響と展開可能性
PayPal Linksの登場は、日本市場にも間接的な影響を与える可能性があります。
日本ではすでにPayPayなどが強い地位を築いていますが、国際送金や暗号資産対応といった分野では制約が多く、PayPalの新サービスが導入されれば競争環境に変化をもたらす可能性があります。
日本における送金サービスの状況
日本ではキャッシュレス決済の普及が急速に進み、QRコード決済や電子マネーが広く利用されています。ただし、個人間送金に関しては銀行振込の文化が根強く残っており、スマホアプリによるP2P送金の利用率は米国と比べると限定的です。以下に主要サービスを整理します。
| サービス名 | 特徴 | 対応範囲 | 制約 |
|---|---|---|---|
| LINE Pay | LINEユーザー間で簡単送金 | 国内限定 | 国際送金や暗号資産非対応 |
| PayPay | QRコード決済に強み | 店舗決済中心 | 国際送金に制約 |
| 銀行系アプリ | 口座間送金に強み | 国内銀行間 | 手数料が高く、即時性に欠ける |
| PayPal | 国際決済・ECとの親和性 | 200市場以上 | 日本国内でのP2P活用は限定的 |
このように、日本市場では利便性はあるものの、グローバルに通用する送金インフラは整っていません。PayPal Linksはそのギャップを埋める可能性があります。
PayPal Linksが日本に導入された場合のインパクト
もしPayPal Linksが日本に導入されれば、個人間送金やフリーランスの報酬受け取り、小規模ECの決済などに大きな変化をもたらします。特に国際的な仕事をするユーザーや、海外からの顧客を抱える事業者にとっては利便性が飛躍的に高まります。
- 海外クライアントからの少額報酬を簡単に受け取れる
- 越境ECにおける暗号資産決済の導入が容易になる
- 送金リンクを使ったイベント参加費や共同購入の清算が可能
一方で、日本の規制環境や税制が普及のハードルになる可能性もあります。暗号資産の送金に関しては金融庁の厳しいルールがあり、導入されても海外同様にシームレスに使えるとは限りません。
それでも、グローバル基準での決済手段が日本市場に入ることで、利用者の選択肢が広がり、既存サービスに競争圧力を与えることは確実です。
PayPal Linksが描く送金の未来と課題
PayPal Linksは「送金を会話の延長にする」という革新的なアプローチを提示しています。チャットやメールに貼るだけで送金や請求が完了する仕組みは、従来の銀行振込やQRコード決済にはなかった利便性をもたらし、決済体験の大幅なシンプル化につながります。
今後の展開において注目すべき点は大きく3つあります。第一に、暗号資産を日常的な支払いに取り込む動きが加速する可能性です。投資や投機の対象とみなされがちな暗号資産が、日常的な割り勘や小口決済に利用されれば、社会的な位置づけが一気に変わります。
第二に、国際送金の障壁が下がる点です。これまで銀行経由では高額な手数料や数日の待機が必要でしたが、リンクを使えば即時かつ低コストで資金を移動できます。第三に、規制や税制への対応です。
特に日本のように暗号資産に厳しい国では、利便性と法的な制約の間で折り合いをつける必要があります。
- 暗号資産の日常利用化:PayPalが取り込むことで社会的信用度が高まり普及を後押し
- 国際送金の低コスト化:銀行や従来サービスに代わる新たな標準になり得る
- 規制・税制への適応:普及のスピードを左右する最大の課題
また、PayPal Linksは「SNS的なUX」を持つため、若年層を中心に受け入れられやすい点も特徴です。一方で、リンクの悪用やフィッシングのリスクも存在し、セキュリティ面での教育や技術的対策が欠かせません。
さらに、既存のPayPayやLINE Payといった国内サービスとの競争が激化する中で、PayPalが日本市場にどう浸透していくかが注目されます。
総じて、PayPal Linksは決済の新しい常識を提示するサービスです。日常生活での利便性を高める一方、暗号資産の利用拡大や国際金融の構造変化にも影響を与える可能性を秘めています。今後の普及の成否は、規制とユーザー体験の両面をどうクリアしていくかにかかっています。







